Tenrikyo Europe Centre
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内子・パリ布教所長 松川高明
早いもので今年も残り数日となりました。年末になると、この過ぎ去った1年を振り返られる方も多いのではないかと思います。まず自分のこと、家族親類のこと、友人知人のこと、また職場の同僚や近所の人たちのことなど。何も変わったことがなければそれに越したことはないのですが、だれかが病気になったり、いろいろな悩み事情を抱えて苦しんでいたりすると、心配ごとが絶えなくなります。また地域社会の出来事や私たちを取り巻く周りの環境についても、常に関心を持って日常生活を送っているのが実際のところであります。
ここフランスの地でも今年はいろいろなことがありました。一番衝撃的だったのは、4月のパリノートルダム大聖堂の大規模火災なのではないでしょうか。パリの象徴とも言える大聖堂が火災被害にあったことは、カトリック信者のみならず、フランス国民にとっても心傷める出来事であったことと思います。実は日本においても去る10月31日、世界遺産の一つである沖縄県にある首里城が大規模な火災に遭い、正殿など主要な建物が全焼し、琉球王国時代から伝わる貴重な収蔵品が多く焼けてしまいました。約30年の復元工事を経て、今年の1月にやっと再建されたばかりの首里城が火災に遭ったことは、沖縄の人にとっても大きな悲しみとなりました。
皆様もご承知のように地球温暖化の影響で、近年これまでにない自然災害が世界各地で起こっております。異常気象による熱波、洪水、干ばつ、森林火災などのニュースは、もう日常茶飯事のこととなりました。これらの自然災害の頻度が増えると共に、近年その規模が大きくなり、被害がますます拡大していっております。今年も残念ながら、6月と7月に熱波がヨーロッパを襲い、また10月には南フランスで大洪水が発生し、多くの被害が出ました。日本においても同じ10月に強力な台風が関東甲信地方に上陸し、甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しいところであります。被害に遭った人たちのことを考えると、決して他人事とは思えず、本当に心が痛みます。
おふでさきに、次のような厳しいお言葉があります。注釈と共に、紹介させていただきます。
このせかい山ぐゑなそもかみなりも
ぢしんをふかぜ月日りいふく(6-91)かみなりもぢしんをふかぜ水つきも
これわ月日のざねんりいふく(8-58)
この世の天災地変、山崩れ、雷、地震、大風と言ったような出来事は皆、神様からのお知らせで、これによって人心の反省を促されております。
このはなしなんとをもふてきいている
てんび火のあめうみわつなみや(6-116)
この親神の話を人々はどう思うて聞いているか。親神のたすけ一条の意図を遮るならば、そのかやしは天火、火の雨、海はつなみというような事となって現れると仰せられます。
かような厳しいお言葉で、人間の心得違いをお知らせくださっているのですが、つづくお歌では、、、。
こらほどの月日の心しんバいを
せかいぢうハなんとをもてる(6-117)
これ程までに、親神は種々と心配をしているのに、世界中の人間は、一体何と思っているのか。
たん/\とくどきなけきハとくけれど
しんぢつなるの心たすける(6-118)
親神は、一列人間の身の上を思うて、いろいろと口説いたり歎いたりしてはいるが、この親神の意図を悟り、真に自分の心を反省して誠の心になってさえ来れば、親神は、必ずその者を救けてやろう。
どのよふなものも一れつハかこなり
月日の心しんばいをみよ(6-119)
人間はどのような者でも皆親神の子供であるから、子を思う親心から、親神は種々心配しているのであるが、この心の程をよく察してくれるがよい。
このよふハ一れつハみな月日なり
にんけんハみな月日かしもの(6-120)
この世の中にありと凡ゆるものは皆親神の創造し守護するところ、全宇宙は親神の身体であって、人間身の内もまた、親神の創造し守護して人間に貸しているものである。
せかいぢうこのしんぢつをしりたなら
ごふきごふよくだすものわない(6-121)
世界中の人間が銘々の身体は親神によって造られ、親神から借りているのであるという真実を悟ったならば、誰しも強気強欲を出して自分勝手の振舞いをする者はなくなってしまう。
こゝろさいしんぢつよりもわかりたら
なにもこわみもあふなきもない(6-122)
銘々の心にかしもの・かりものの理を真から了得出来たならば、何も怖いこともなければ危ないこともない。
たん/\となに事にてもこのよふわ
神のからだやしやんしてみよ(3-40/135)にんけんハみな/\神のかしものや
なんとをもふてつこているやら(3-41)
世の中のものは、総て親神様のおつくり下されたもので、全宇宙は親神様のお身体である。従って、人間も自分の力で出来たものではない。親神様のおつくり下されたものを親神様から貸して頂いて、この天地抱き合わせの親神様の懐である世界に、親神様の御守護によって生きているのである。
残念ながら世界の多くの人たちは、「この世は神の身体」という真実を知らないことから、借り物の身の内はもとより、自然社会に至るまで自由勝手に使ってきております。折しも今月2日からスペインで第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が開催されており、加盟国各国が温室効果ガスの削減目標の引き上げや、新たな排出抑制策を打ち出せるかに注目が集まっています。地球温暖化の影響は、気温や水温を変化させ、海水面上昇、降水量の変化やそのパターン変化を引き起こすとされます。また、洪水や旱魃、酷暑やハリケーンなどの激しい異常気象を増加・増強させる可能性があると言われています。既に数年前から、我々はその環境変化を身近に感じ取っています。正に抜き差しならぬ状況に来ていると言っても過言ではないでしょう。
「この世は神の身体」とお聞かせいただきます。例えば、自分が山の中にいたならば、その山を外側から見ることはかないませんが、自分が山の中にいるということは分からないわけではありません。それと同じで、神の身体の内にあっては神の身体を直接見ることはできませんが、神の身体の内にあることは分からないわけではありません。よくよく思案すれば、親神様の十全の御守護を身の内に、身の周りに、また広く世界の上に感じ取ることができるからであります。この十柱の神様の御守護の理を、手ぶりに表して勤められるのが、おぢばで勤められるかぐらづとめであります。男5人、女5人の10人のつとめ人衆が、人間宿し込みの元の場所であるぢばを取り囲み、それぞれの役割のかぐら面を付けて、十全のお働きの理を手ぶりに表して勤められます。元始まり以来、変わらぬ十全の御守護を以って、親神様が人間身の内はもとより、この世界をご守護下されていることを、このかぐらづとめから体感させていただくことができるのであります。
この十柱の神様の御守護については、皆様もよくご存知でしょうから詳細は省きますが、中でも「火と水とが一の神、風よりほかに神はなし」とお聞かせくださるように、「火水風」の恵みに親神様の御守護を一番身近に感じさせていただけるのではないでしょうか。そこで、この火、水、風のお働きについて今一度お話しをさせていただきたいと思います。
十柱の神名で言えば、「水」はくにとこたちのみこと様であります。
天にては月様と現われ、人間身の内の目うるおい、世界では水の守護の理。
「火」はをもたりのみこと様です。天にては日様と現われ、人間身の内のぬくみ、世界では火の守護の理。この月日様が十柱の神様の中でも真実しんのお働きであります。この世元始まりの時に、十柱のお働きによって人間がつくられた証拠に、人間には手足とも十本の指をつけておいたとお聞かせいただきます。中でも親指は月日様のごとく、親指があるので、あとの指が役に立つように、月日様があとの八柱の神様を道具にお使いになって、この世をお始めになり、今なお御守護をしてくださっているのであります。
「青い惑星」と呼ばれるこの地球の表面は約3分の2、70%が水で覆われていて、その大部分は海水です。人間の体内の水分量も成人男性で60%、新生児だと約80%あると言われています。例えば、体重が70キロの成人男性であれば、42ℓの水分を体内に蓄えていることになります。そして私たちは一日に約3.3ℓの水を排出しているそうです。しっかり水分を取らないと、その排出分を補えません。夏に熱中症で倒れる人が多いのは、この水分補給が足りないからです。特に乳幼児は気を付けないといけません。人間は水と睡眠さえしっかり取れば、2~3週間は生きられるそうですが、もし水を取らないと4~5日しか生きられないそうです。
また、人間の体温ですが、これは人にもよりますが、平均すると大体36.5度から37度に保っていただいています。このバランスが崩れると熱が出て苦しまないと行けないし、山などで遭難して低体温症になると命の危険さえ生じます。をもたりのみこと様の御守護をいただいているからこそ、体の温度をちょうどよい体温に保っていただいているのです。しかしながら、今世界の平均気温は急激な勢いで上昇しつつあります。地球温暖化の兆候やその影響が加速しており、現にこの5年間で観測史上もっとも高い気温を記録するなど、完全に熱のバランスが崩れて来ています。人間の身体で言うと、徐々に平均体温が上がっているようなもので、そのために体調を崩し、何もしなければ、その先には毎日高熱にうなされる自分が見えてきます。
くにとこたちのみこと様とをもたりのみこと様のお働きにより、私たちの身体は水のうるおいと火のぬくみでちょうどよくバランスを取っていただいています。そして普段の生活の中でも、その恩恵を十二分に受けています。水道の蛇口をひねれば水が出る。電気のスイッチを入れれば電気がつく。あまりにも当たり前のことなので、普段私たちはそのことを意識していません。しかし、例えば、地震や台風で断水になったり、停電が起こったりすると、私たちは初めてそこで、水や火の有難さを実感するのです。つまり当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかったのだと、初めてそこで気づくわけです。ですから、普段から私たちは水の有難さ、火の有難さに感謝をして通らせてもらわなければなりません。火と水、ぬくみと水気、これこそが私たち人間の生命を支える根本なのです。私たちの体内にも、また私たちを取りまく自然環境の中にも、火と水のご守護は満ちみちていると言えましょう。
次に、風の御守護をくださる、かしこねのみこと様でありますが、これは人間身の内においては息吹き分けと共に声、言葉の吹き分けの御守護であります。世界では風の守護の理とお聞かせいただきますように、風が吹くので物が腐らずにすむと仰せられます。人間にとっては息一つ、呼吸こそ生命の支えであることは言うまでもありません。呼吸ができなくなれば、人間は生きていくことがかないません。私は子どものころ喘息で苦しんだので、呼吸の大切さを良く知っています。息を吸ったり吐いたり、このバランスが崩れると、過呼吸などになったりして苦しまなければならなくなります。まさに息一つで、命をつないでいただいていると言えるでしょう。
このように、私たちの身体の内外に満ちみちて、私たちを抱きかかえ私たちの生命を支えて下さっているのが、火水風という親神様のご守護でありますが、このお働きは、ただ単に常に穏やかで優しいお姿ばかりではありません。時には、大火事、大洪水、あるいは猛烈な台風などとなって、私たちの心得違いをいろいろとお知らせくださるのであります。これらもみな、火水風のお働きであります。人間の力をはるかに超えた大きな力、私たちの常識とは、まったくかけ離れた鮮やかな姿をお見せ下さるのが、親神様のご守護なのだということを、私たちはこの「火水風」という言葉の中に感じさせていただけるのです。
子どもの成人を待ち望まれる親神様は、人間が我が子を思うその心から、親神様の御心を思案してくれと、おふでさきに次のようにお示しくださっています。
にんけんのハがこのいけんをもてみよ
はらのたつのもかハいゆへから(5-23)
人間が、我が子に対して意見をするのも同じ事である。腹を立てるのも、その子の身を思い将来を思う我が子皆可愛いい上からするので、決して、憎む余りにするのではない。
にんけんのわが子をもうもをなぢ事
こわきあふなきみちをあんぢる(7-9)
ちょうど、人間の親が、我が子の事をいろいろ心配するのと同じ事で、親神も、我が子である人間が怖い危ない道を通らぬよう、いろいろと心を砕いて心配しているのである。
にんけんも一れつこともかハいかろ
神のさんねんこれをもてくれ(13-27)
だれでも、自分の子供の可愛くない者はない。その可愛いい子供が、親の心尽くしも知らず勝手な事をしていたら、親としては残念であろうが、親神の心もこれと同じである。
にんけんもこ共かわいであろをがな
それをふもをてしやんしてくれ(14-34)
人間でも我が子は可愛いいものであろうが、それから推しても、人間の親である親神が、如何に一列の人間を可愛いく思い、救けたいかを、推し量ってくれ。
私たちは教祖のお口を通して、この世のよろづ委細をお聞かせいただきました。そして教祖が子ども可愛い故から、その定命を25年縮めてまでも急き込まれた、かぐらづとめの中に、この世界を陽気ぐらしの世に立て替えていただける真実があるのだと悟らせていただきます。ですから、このかぐらづとめの理をいただいて国々所々で勤められる月次祭、また朝夕のおつとめに真剣に祈りをささげ、火水風のお働きをはじめとする、十全の御守護に日々感謝を申し上げることが、いかに大切なことであるかは言うまでもありません。
来年の9月20日には当ヨーロッパ出張所において、開設50周年記念祭が勤められます。大勢の皆様と共に、一緒にみかぐら歌を唱和し、陽気に勇んだおつとめが勤められるように、しっかりとおつとめの練習に励ませていただきましょう。
ご清聴、ありがとうございました。