Tenrikyo Europe Centre

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2021年9月月次祭神殿講話

ヨーロッパ出張所長 長谷川善久

さて、昨年より世界中の人々が、目に見えないコロナウイルスによって、もしかしたら出直すかもしれないという恐れのなかで生活をしてきております。

在欧教友の中にも70歳代以上の方々がおられますが、今のところ感染により命の危険が迫ったというような方は、おられないようです。いつも私達の身の回りに起こることは、親神様が大難を小難に、小難を無難にしてお守りくださっているお陰だと朝夕のおつとめでも御礼を申し上げている次第です。

実際、ヨーロッパでは、予想を超えたワクチンの早期開発と接種のお陰で、生活状況も以前のように戻りつつあり、コロナへの恐怖心もかなり低くなったと思われます。このような好転についても世界中の研究者、医療従事者、政府関係者らが、一丸となって示した他者への献身的な行動があればこそ、親神様が力をお貸し下さったに違いありません。

このコロナ禍によって引き起された生活環境の変化は強制的ではありましたが、それにより良い気付きを得ることもありました。弱者をいたわる心や人との絆の大切さへの再認識などもそれにあたります。この2年の間に人を気遣う気持ちが高められ、人間関係の親密度が増したという人もいるでしょう。そんな人々は、私達、信仰者と同じように、自分の健康のことよりも、家族や友人の事をいつも頭に思い浮べて、その健康を願っていたに違いありません。

特にコロナ拡大の初め頃には、家族、友人がいつコロナに襲い掛られるかもしれない言いしれぬ不安のなか、連絡をとり無事を確認して喜び合う姿がありました。大切な人達が健康でいてくれることが、本当にありがたく、嬉しいことでした。

ところで、このような心配事があるとき、相手を支えるために信仰を持たない人ができる事は、会いに行ったり、電話、写真付きのメール、ZOOMミーティング、手紙などで連絡をとることに限られています。その点、我々、信仰者には、もう一つ「神に祈る」という行為が許されていることは本当に素晴らしいことだと思います。

私達、天理教信者は、「おつとめ」をすることで、親神様に祈りを捧げることができます。この「おつとめ」は、歌だけでなく、踊りを通しても、またその歌詞の意味を心に思い浮べても祈ることが可能となっていることから、全ての人に向けられたものだと言えます。天理教の祈りには、他者を愛し、大切に思う心だけが求められ、智慧も知識も動作をこなすだけの身体能力さえも究極的には必要ないのです。ここにも地上の親神様である教祖が全人類の親であるという証を見て取れるような気がします。

教祖から直々に教えられた「おつとめ」が、もし全部出来ない場合でも、全くやらないよりはましであることは言うまでもありません。例えば、みかぐらうたを歌う、もしくは神名を唱えるだけ、心に思い浮べるだけといったような形であっても、各自が、その時の自分にできる限りの「おつとめ」つとめることで、親神様、教祖の心と繋がり、ご守護がいただけるのです。

しかし、そもそも「祈り」とはどういったものでなのでしょうか。まず祈りを捧げるのは、人間だけと言えます。全生物の中で祈る行為ができるのは人間だけということは、つまり、神が人間に可能とならしめた行為のなかで、その頂点に位置するもの、それが「祈り」なのです。

ご存じの通り、祈りとは、どんな願いも叶えてくれる「アラジン」の魔法のランプではありません。それは、見えぬ神の愛に全幅の信頼をおき、その神聖なる聞えぬ語りかけを形のない心の耳で聞こうとする行為なのです。私達は、祈るとき、見えない心の力を信じ、見えない神に触れているのだと思います。

天理教信者である私達は、「つとめ」をするために、あるいは「つとめ」をすることによって、心の掃除をすると言われていますが、この掃除も、神様の声がよく聞こえるように心の耳の感度を高めるためのものです。神の声を聞くために必要不可欠なこと。それが「心の掃除」です。

おふでさき八号60 から63の一連の歌の中に「そふぢ」という言葉が出てきます。読あげる前に意味の概略を説明しますと、

「すべての人間は親神の子どもであり、その存在は可愛くて仕方ない。しかし、そんな子供達の心にもがたくさん積もっており、それをすっ きりと掃除しないことには親神がどれほど親心を掛け幸せに導こうとしても無理がある。親神は我が子である人間の行く末を 心配しているが、その胸中を誰も知らない、残念だ」と私達が、親神の思いを知らずに心を掃除をないがしろにしていることへの無念さが伝わってくるお歌になっています。

以下がそのおふでさきです。

月日にハみな一れつハわが子なり
かハいゝばいをもていれとも(八号 60)

一れつハみなめへ/\のむねのうち
ほこりいゝばいつもりあるから(八号 61)

このほこりすきやかそふぢせん事に
月日いかほどをもふたるとて(八号 62)

月日よりこわきあふなきみちすじを
あんぢていれどめへ/\しらすに(八号 63)

おつとめで心の掃除に励むことの大切さがよく分っていただけたと思います。

ところで、祈りのなかで、天理教でも手を合わせる動作が必ず最初にありますが、これはアジアの諸宗教一般にみられる行為です。そもそも日本では、亡き人に向けた合掌、食前の「いただきます」と食後の「ごちそうさま」の合掌、誰かに「ありがとう」とお礼を伝えるときの合掌、誰かに「ごめん」と謝るときの合掌、誰かに「お願い!!」と何か頼み事をする時などに合掌します。ただし、他のアジア諸国とちがって、日本では日常の挨拶の時には合掌はしません。

これは、一般的な説によるとインド元来の仏さまを拝む習慣が日本へはいってきたものだそうですが、大事なところは、そこに神の目には見えない力や働きへの「畏敬の念」が加わり、発展したものが日本独自の合掌だと言われていることです。

神の目には見えない力やはたらきへの「畏敬の念」とは何か。それは「すべては当たり前」「自分で生きている」という人間の力を過信したおごりに向けた反省の気持ちだそうです。本来の私たちの命、人生は、すべては当たり前ではありません。目には見えないはたらきかけにより、生かされています。その事に対して「申し訳なさ」「感謝」の思いが湧き起こる。この思いが合掌となって体現されていると言うのです。

こういった日本における合掌の意味を知ることも、皆さんが、感謝のおつとめをつとめるときに、役に立つかと思います。また、自身のなかに感謝の気持ちが少ないと感じるとき、気持ちが沈んでいるときには、とにかく神名を心で唱えて感謝の念が体現されている合掌をしてみてください。不思議と気持ちの変化が呼び起されるのが感じられると思います。

祈る行為を行う上で土台となる気持ちは、感謝だと申し上げました。

おふでさきにも

めへ/\のみのうちよりのかりものを
しらずにいてハなにもわからん三号 137

と教えていただいているように天理教信者にとっての神へ対する感謝とは、第一に「かしもの・かりもの」の教えを信じることから沸き起る感謝であることは言うまでもありません。

また感謝の心を捧げることが核心ではありますが、加えて、その周囲には、2つの重要な心持ちがあることを知って頂きたいと思います。

その一つ目は、感謝の前に「教え」に照らした自己の反省、至らないことへのお詫び。二つ目は、感謝の後に続く、生き方を改善してゆくことのお約束です。祈る中での順序でいえば、まず自己反省、次に感謝、最後に改善のお約束となります。

自己反省を介して、心も低くなり、至らない自分であっても、教祖はいつもすぐ側で導いてくださることに気付くことができます。また親神様も私達を見捨てることなく、自身の身体、親子夫婦、衣食住、仕事環境など、全て本来あるべき以上のありがたい状況を貸し与えてくださっているという自覚が、私達の心に芽生えるのです。そして、この自分には身に余る状況が親神様から貸し与えられていると心から感じられることが、深い感謝の念へと繋がります。我々は皆、教祖の「ひながた」の万分の1もまだ出来てないけれども、それでも親神様、教祖は大きな愛で優しく許し、包み込んでくださっているという思いが大切であると思います。

上記のような感謝があれば、そのあと自然と心に浮かぶのは、自分自身を向上させることの約束です。祈りの最後は、心の成人をするお約束となります。

丁度、親の言い付けを守ることの出来なかった子供であっても、そのこと反省し、許してもらった後は、もっと頑張ろうという気持ちになるのと同じです。注意していただきたいのは、出来そうもない約束をするのではなく、小さな成人に向けた約束を根気よく積重ね、大きな心の成人を為し得ることが親神様も喜んでくださる道だと思います。

来週の9月19日には、ヨーロッパ出張所創立51周年記念祭を11時から行わせていただきます。YOUTUBE配信も活用していただきできる限り多くの方々にご参拝いただくことを願っております。

在欧教友が毎日の幸せをより感じられるようにと取決めた記念祭への成人目標の一つに「座りづとめから12下りまで、みかぐらうたをすべて歌えるようになろう」という、言わば「祈り」に関するものがありました。

どうか、来週の祭典日には、みかぐらうたの本を見ながらで結構ですので、この神殿とヨーロッパ中の信者が繋がり、一手一つに大きな声でみかぐらうたが唱和されることを願っています。そして、各自が、これまでのヨーロッパ出張所と自らの繋がりを振返りながら、感謝の言葉と今後の成人のお約束を親神様、教祖に申し上げさせていただきましょう。

ご静聴ありがとうございました。

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