Tenrikyo Europe Centre
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理以通布教所長 加藤栄一
本日はヨーロッパ出張所7月の月次祭を皆さんとご一緒に結構に勤め終えさせていただきました。ご指名を頂きましたので、しばらくお話をさせて頂きたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。
教祖120年祭の年
120年祭の年もはや半年が過ぎ、いよいよ後半に入りました。皆さん方はそれぞれに特別の思いを持ってこの年祭の年を過ごしていらっしゃることと存じます。私も年初に心定めを致しまして、意義ある年にしたいと思って船出をし今日に至っております。
今年が私と家内にとりまして例年と異なった年になったのは、まずオセアニア地域での陽気ぐらし講座の講師の御用を勤めるようにとのご命を海外部から頂いたことであります。3月初旬の2週間のニュージーランドとオーストラリアの6箇所で御用を勤めました。全部で130名強の参加者にお会いすることができ、改めてお道のご教理についてその普遍性を語り合うことができましたことを大変うれしく感じております。講座は私と家内が2人で全地域を受け持つという海外部初の方式を導入されましたので、それを受けて私どもは文字通り二人三脚の共同責任体制で実施することと致しました。
夫婦のあり方
まず皆さんに私と家内の夫婦のあり方を知っていただくことが一番分かり易いと考えました。私どもは結婚して今年で47年目に入りましたが、過去においても、また今現在も色々と節をお見せ頂いております。夫婦の関係、親子の問題、そして家庭内で過去に発生した大きな節目の問題などを取りあげて、できるだけ正確に客観的にお伝えして、私どもがこれにどう対処してきたのかを話の叩き台といたしました。この辺りのスピーチは家内が担当してくれました。私は本当に会社人間となっていて、家庭内のことは家内に任せきりであったと思います。従って家族とのコミュニケーションもなかなかうまく取れていませんでした。今になって思うのは、子供を育てる上で、夫婦の調和、天と地の調和、母性性と男性性の調和など、お互いが補い合うことの大切さにもっと気が付くべきでした。私自身の不徳のいたす処を皆さんに知っていただいて、私自身の身の錆が落ちてくれるのではあれば、神様はいんねんも多少は変えて下さるのかなあとも思いました。
企業責任
私の方から皆さんに申し上げたいことのひとつは、私が長年企業におりましたので、年若くしてようぼくにはなりましたものの、いわばお道外の人間として、お道の教えを見させてもらって来ました。現在ではお道の内なる人間として外なる企業を見ることができます。各企業の基本理念とか企業方針が企業を取り巻くステークホルダーに対してどのようにその会社的責任を果たしていくのか、いわば企業の将来ビジョンをどのように策定するのかなど、お道の教理との関連において気の付いたことを申し上げてみました。昨年、日本では企業経営上の色々なトラブルが発生しております。それは日本だけでなく、世界の主要な国々においても例外ではありません。このような企業経営上のトラブルを引き起こす原因は、すべてお道の基礎教理から逸脱した自分本位の行為、行動に起因していることは明白であります。企業経営者としての責任を追求する以前の問題として、人としてのあり方に問題があると言わざるを得ません。今、私はお道の内なる人間として、世の経営者にこの点を強く訴えたい上から触れさせてもったものです。
私の身上発生
次に今年が例年と異なった年となったのは私の身上発生であります。急に身体の関節が痛み出したのです。最初はたいしたことにはならないだろうと自分で勝手に考えて接骨医に行って様子を見ていましたが、一向によくならないので、おかしいなあと思いながら、不自由な体でオセアニアの講座に出発しました。現地での2週間は本当に辛い思いをいたしました。両手の自由が効かなくなったので、上着を着ることやズボンを穿くこともできませんでした。すべて家内にやってもらっていました。重い荷物はとても持ったり、押したりできませんので、現地の方にやってもらって移動していました。こんな状態ではありましたが、講座はしっかりとつとめさせて頂くことができました。壇上では笑顔を忘れずに、ご質問にも丁寧にお答えいたしました。帰国してすぐ憩いの病院を訪ね、診察を受けましたが、薬をもらって2週間は様子を見ることになりました。3月下旬に問診した時、病状が好転していないので、医師から精密検査が必要と言われ入院となりました。とくに気になったのは、前立腺癌の疑いと関節の痛みに関係があるかも知れないから、そちらも合わせて検査すると言われたことでした。日は経ち、個々の検査結果はその都度知らされましたが、どれもこれも悪い所なく、関節の痛みの原因は不明でした。ただ、痛みの方はステロイドを飲み始めてから薄らぎ、殆どなくなって来ていました。4月10日には前立腺関連の細胞組織の検査をしました。結果が出るのに1週間もかかると言うので、あれこれと人間思案に落ち込みました。入院は3週間でしたが、その間に多くの方からありがたいお諭しを頂いたり、おさづけを受けることができました。永尾先生も一時帰本していらして、早速お見舞い下さり、おさづけもして頂きました。なにせ入院というのは、これが生まれて初めてのことで、よくもこれまで何事もなくやって来られたものだなあとしみじみわかりました。そして、病名は『浮腫を伴う関節炎症候群』というものでした。今もってこの病名の意味がわかりません。
お諭しと私の受け止め方
懇意にしていただいているお道の先生からお手紙を頂きました。そこには「病気のお陰で身体も生命も自分のものではなく、お借りしていることを一分一秒も忘れないで暮らして行けますね。それを心の底から喜ぶことがまず第一です」とありました。私どもが神様からお借りして心のおもむくままに日々使っている例の9つの道具のうち右手左手の関節にお手入れをいただいたことについては「今後絶対に人間思案を差し挟むことなく、それを肝に銘じて心に定め、かつ、今まではそこまで行くことのできなかった心を反省し、お詫びしなさい」とも教えられました。まさに
めい/\のみのうちよりのかりものを
しらずにいてはなにもわからん
このおうたの意味をしっかり悟るようにとのお諭しでありました。
病室は6人部屋で、たった2畳ほどのシングルベットの横に小さい椅子が1個だけ入るスペースがあり、ここでお見舞い下さった方々と充分にお道の話を語り合う時間がありました。天理を離れた病院ではこんなことはできる筈もなく、憩いの家に入れたことは本当によかったと思っております。
郡山大教会に所属する教会長さんで私が修養科の時にお世話になった方からもおさづけを頂戴いたしました。その先生は「所属の教会長さん、自分の嫁さん、そして名古屋に残している息子さんに対して優しい言葉をかけて大切にせねばいかん。腹立ちはいかんで」と諭されました。
私は今回の検査入院で、今まではなにかぼんやりと見えていたものが、たった3週間の入院でしたが、今は何だかはっきりと見えてきたような気がします。折角頂いた身上を誠に結構と思わせて頂くことが大切なんですね。これによって心から生まれ変わらせて頂けるよいチャンスを与えられたのですから、誠のおたすけ人へと成人をさせて頂ける出発点にしなくてはならないというのが私の受け止め方であります。
教祖ご誕生祭
4月18日教祖ご誕生の日は丁度入院最後の日となりました。病院内には特殊な装置が備え付けられていて、患者が月次祭や誕生祭などの行事はイヤフォンで聞くことができるようになっていました。かぐら、手をどりの様子も神殿講話もしっかりと聞くことができました。本部員、寺田好和先生には海外部部長の頃から面識があり、入院中は何度もおさづけの取り次ぎに来てくださいました。そして、その都度お諭しを頂きました。「理以通(リーズ)布教所は神さんが開かれた場所だから、しっかり守って下さるから大丈夫」といつも励まして下さいました。この日の神殿講話は寺田先生のご担当であることを前もってご本人から聞かせてもらっていましたので、期待をもって聞きました。先生のお話の中では夫婦のいんねんについて取り上げられた点に改めて思いを寄せることになりました。
「夫婦は選び合い、好き合って一緒になったのだけれども、これもまた神様がいんねんあるから夫婦として結んで下さるのだと思う」と言われました。さらに続けて「夫婦は合わせ鏡であります。夫婦はお互いに相手の姿の中に自分の姿を見て、己の心を振り返り、神様の思召しに添えるよう心改めて通らせて頂くこと、またお互いが足らぬ所を補い合って通ることが大切である」と結ばれました。
私は、自分がどのような状況にあっても、陽気ぐらしの心遣いができる一番の相応しい相手として組み合わせて頂いていると思案して、夫婦が互いに心のふしんに励ませていただくことが本当に大切であると悟らせて頂きました。
私という人間の貸借対照表
理以通布教所の設立のお許しを得たのは1995年で、当時私も家内もすでに60の坂を越えていました。私はまだ会社勤めをしていましたので、家内が初代の布教所長をつとめたのであります。その切っ掛けとなったのは、私どもの次男の目の身上を頂いたことです。私自身は長年の会社勤めでお道のご用は何もしないで来てしまったのですが、本当に神様に守られて、救けていただいた会社生活であったと思っています。サラリーマンとしての成果はともかく、上司、部下、同僚に恵まれて不自由なく過ごして参りました。神様の帳面には「この男にはずいぶん手を掛けてきたな。少し与えすぎたと違うか」くらいに思し召されていたのではないかと時々思っていました。
神様の帳面を貸借対照表に照らして申し上げますと、まず私という人間を一つの会社に見立てるならば、資産は確かに増えていきました。それが通常の商取引の結果増えたのであれば問題はありません。私という会社はどうもそうではなくて売上が伸びなくて、経費ばかりが膨らんで、資金繰りに困った挙げ句、銀行から借入を増やした結果、資産の増大に結びついたような感じがしています。借入金で設備投資をしたり、商品在庫を増やしたりしたようです。
私はすでに現在は退職して収入は年金だけですが、私という会社に対する借入金の返済が残っている気がしてなりません。これをどうして返済していくのか。それはお道のよふぼくとして、しっかりとつとめ上げていくことが借入金の返済に繋がるのだと私は思っています。このような自分の思いも、また、リーズに残ってお道のご用をさせて頂く心づもりともなったと思います。
海外布教について
海外伝道に携わる者として、感じて来たことですが、海外伝道の仕事をするには、まずその人、その家族の生活基盤が整っていなければならないということです。海外での最低生活を保証する目処がなくてはなりませんし、今日までは、教会本部とか所属の大教会が個別に支援母体となって何とか維持して来られたと思います。しかし、日本からの経済支援にはおのずから限界があります。一方、海外での伝道活動は今のレベルから一段も二段も格上げする必要に迫られていると考えられます。その為にはどうしたらよいのかが、当面の問題であります。
私は以前から生活能力を有する伝道者を養成することが必要だと考えてきました。換言すれば、教会本部や大教会の経済支援を仰がなくとも、自前で生活を維持できる伝道者を世に送り出すことであります。そのためには、伝道者を派遣する前に、生活能力の資格を得て、これを派遣先で活用できるようにしてあげることだと思っています。生活能力で考えられるのはいくつもあると思います。学校の先生、レストランの経営やシェフ、ベーカリー、スポーツコーチ、茶道、華道、書道などの先生。海外伝道者養成のための能力資格を含む全教育コースを教会本部にてお考え頂きたいと思います。これは、いわゆるプロの伝道者を育成するのですから、20代30代の若手を対象としなくてはなりません。世界のあちこちでしっかり根を下ろした海外伝道ができますように、その基礎作造りを10年のビジョンで改めて着手してもらいたいと思っています。
今年の3月、オーストラリアのブリスベンを訪問した時、合気道を教えている日本人ご夫妻が確か布教所を開設しておられたことを聞きました。このカップルが大教会又は所属の教会から経済援助を得ていらっしゃるかどうかは分かりませんが、少なくとも、自分からの生活能力をフルに活用して自らを支え、お道の発展に尽くしておられるのだと思いました。
以前当出張所の所長を務めていらした森井敏晴先生が、最近、修士論文を大学に提出されたそうです。私の知人である方が、たまたま森井先生の友人であったことから、森井先生の本が、その知人から送られてきました。タイトルは『天理教海外伝道 -資料を中心として-』というものです。これを読んでみましたら、森井先生は海外布教について必要な諸条件を列挙された上で、やはり伝道者を支え、成功に導くためには、その支援が必要であると語っておられます。先生のお考えもやっぱりそうであったのかと、しみじみ考えさせて頂きました。
なるほどの人
私と家内はすでに古希を過ぎました。イギリス・リーズ市に小さな布教所を構えて海外伝道に携わって参りました。これから先、イギリス人に主体的に自主的にお道のSPIRITを受け入れてもらうためには、私と家内のさらなる丹精以外には道は無いと思っています。あの2人は天理教をやっている人だから、なるほど世間一般の人とは何か違った香りがするなあと思って理以通布教所へ寄ってきてくれる人が、たった一人でも二人でも出てきてくれることが私どもの望みです。誠の心、真実の心を持って努力をさせて頂きます。時間はかかるかも知れません。が、もうこれからは人間思案はすっかりと忘れ去って、あとは神様にお任せすることにいたしたいと思っています。
御静聴ありがとうございました。